「もう、頑張らなくていい」。あなたの“祈り”が届かなかった、本当の理由
これまであなたは、自分を変えようと、本当に真剣にアファメーションに取り組んできたのだと思います。それなのに変われない現実を前に、「やっぱり私がダメなんだ」「信じる心が足りないんだ」と、ご自分を責めていませんか。
もしそうだとしたら、どうか、もうその必要はありません。
この記事は、あなたの努力を否定するためにあるのではありません。むしろ、その真面目さゆえに生まれてしまった苦しみから、あなたを解放するためにあります。
アファメーションがうまくいかないのには、あなたの心を守るための、ちゃんとした理由があったのです。その、あなたの知らないところで健気に働き続けていた“心の仕組み”を、一緒に、ゆっくりと解き明かしていきましょう。
「神様」という言葉の定義について
本題に入る前に、一つだけ言葉の定義をさせてください。この記事で用いる「神様」という言葉は、特定の宗教における人格神や、どこか遠くにいる超自然的な存在を指すものではありません。
それは、あなたの中に眠っている「本当はこうありたい」と願う力、あなた自身が持つ“可能性”の、もう一つの名前だと考えてみてください。
したがって、「願いを届ける」とは、あなたと、あなたの可能性が、深く信頼し合い、仲直りをして、同じ方向を向くための、極めて個人的で神聖なプロセスを指します。この共通認識のもと、読み進めていただけると幸いです。
第1章:あなたの心を健気に守る、“3つのブレーキ”の仕組み
あなたの変化を阻んでいたのは、意地悪な存在ではありません。あなたをこれ以上傷つけまいと、無意識のうちにあなたを守っている、心の中に標準装備された“安全装置”なのです。ただ、その働きが、時としてあなたの「変わりたい」という願いと、すれ違ってしまうことがあります。まずは、その健気な“ブレーキ”の正体を理解することから始めましょう。
1-1. いつもの日常が一番安心(現状維持ブレーキ)
私たちの心や脳は、生命を維持することを最優先にプログラムされています。これは心理学で「心理的ホメオスタシス(恒常性維持機能)」と呼ばれるもので、体温を一定に保つのと同じように、心もまた「慣れ親しんだ状態」を安全だと判断し、そこから大きく逸脱しまいとします。たとえ今が苦しい状況でも、未知の未来がもたらすかもしれない“予測不能な危険”よりはマシだと感じてしまうのです。
1-2. 心と現実の“ズレ”が苦しい(矛盾イヤイヤブレーキ)
この心の動きは、社会心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した「認知的不協和理論」で説明できます。「私は愛されている」と唱えながら、心では深い孤独を感じている時、心の中に強い“矛盾”が生まれます。この矛盾は人間にとって非常にストレスフルなため、心は一刻も早くそれを解消しようとします。そして多くの場合、より証拠の多い、馴染みのある「私は愛されていない」という現実の方を信じることで、心の平穏を取り戻そうとするのです。(この理論について、より専門的な解説は、権威あるサイトの情報も参考になります。)
1-3. 「〜しなきゃ」への静かな反抗(“本当の心”を守るブレーキ)
「ポジティブにならなきゃ」と自分に言い聞かせることは、時に、自分の“本当の気持ち”(「今は辛い」「本当は悲しい」)を無視することに繋がります。心は、その“無視された本音”にあなた自身が気づいてほしくて、わざと逆の行動(ネガティブな思考を強める)をとる、という形で必死にサインを送ってくることがあります。これは「心理的リアクタンス」と呼ばれる、自由を制限されたと感じた時に無意識に反発する心の働きとも関連しています。
第2章:あなたの“心のブレーキ”と、静かに向き合う時間
これらのブレーキは、あなたの中に「ある」か「ない」か、ではありません。誰の心にも、必ず備わっています。大切なのは、あなたの場合、どのブレーキが、どんな時に強く作動するのか、その“癖”を客観的に理解することです。
これは自分を裁くための尋問ではなく、自分を理解するための、静かな対話の時間です。できれば紙とペンを用意して、リラックスして取り組んでみてください。
自分と対話する3つのステップ
ステップ1:「本当は、こうありたい」と願う言葉を、具体的に書く
(例:「私は、人からどう思われるか気にせず、のびのびと生きたい」)
ステップ2:その言葉を読んだ時、心に浮かぶ「でも…」「だって…」という声を、否定せずに全て書き出す
(例:「でも、嫌われたら生きていけない」「だって、今までずっとそうやって自分を守ってきたんだから、今さら無理だよ」)
ステップ3:その声に対し、「そっか、そう感じているんだね。教えてくれてありがとう」と、心の中でその存在を静かに認める
ここでは、解決しようとしたり、反論したりする必要はありません。ただ、そういう声が自分の中にいるという事実を、あなたが一番の味方として、静かに受け止めること。それが、変化への、何よりも大切で、そしてパワフルな第一歩になります。
【うまくいかない時は】自己対話が、自己批判になってしまうあなたへ
対話の最中に、自分を責める声しか聞こえず、かえって苦しくなってしまうこともあるかもしれません。その時は、無理に続ける必要はありません。一度、紙とペンから離れましょう。そして、「ああ、私はいま、自分を批判する癖が強く出ているんだな」と、その状態自体を客観的に観察してみてください。それもまた、自分を深く理解するための、重要な気づきの一つです。
→ 「もう変われない」と諦めたあなたへ。
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第3章:“ブレーキ”と共に、そっと踏み出す3つの実践ステップ
抵抗している心を、無理やり変える必要はありません。ブレーキの存在を認めた上で、それでも前に進むための、具体的な方法を試してみましょう。
ステップ1:「〜かもしれない」という“可能性の種”をまく
「私は豊かになる価値がある」と断定するのが苦しいなら、「私にも、豊かさを受け取る資格があるのかもしれない」と、言葉の最後に少しだけ可能性の余地を残しましょう。この小さなクッションが、心の抵抗を和らげます。
ステップ2:自分の“外側”の事実として、客観的に眺める
「どうせ私はダメだ」という強い思考が湧いてきたら、心の中で「今、私の中に“私はダメだ”という考えが浮かんでいるな」と、一歩だけ引いて、まるで空に浮かぶ雲を眺めるように観察します。感情と思考を一体化させず、切り離す、具体的な練習です。
ステップ3:「もし〜したら、〜と心で言う」という、小さな約束
「もし(IF)朝、コーヒーを淹れたら、(THEN)『今日も、一日を始める私を応援しているよ』と自分に言う」という、ささやかな約束を作ります。大きな願いではなく、今の自分を認め、応援する、具体的な行動とセットにすることがポイントです。
【うまくいかない時は】「三日坊主」になってしまうのは、あなたの意志が弱いからではない
小さな約束でさえ続かない時、私たちは自分を「意志が弱いダメな人間だ」と責めてしまいがちです。しかし、それは違います。むしろ、あなたの脳の「現状維持ブレーキ」が正常に、そして強力に作動している健康的な証拠なのです。続かない時は、約束が今のあなたにとってまだ少しだけ大きすぎた、というサイン。もっとハードルを下げて、「もし朝、目が覚めたら、心の中で一度だけ『おはよう』と自分に言う」くらい、絶対に失敗しようがないレベルから再挑戦してみてください。大切なのは続けることではなく、何度でも、軽やかに再開することです。
おわりに:あなたの現実は、あなた自身の知性と勇気で、着実に変えていくことができます
アファメーションは、魔法の杖ではありません。それは、これまであなたが気づかなかった“心のブレーキ”の存在を教えてくれる優れたセンサーであり、自分自身と深く向き合うための、極めて論理的で、優しいツールです。
焦らなくて大丈夫。うまくいかなくても、決して自分を責めないでください。今日、この記事を読み、ご自身の心と真剣に向き合おうとした、その一歩そのものが、昨日までのあなたとは違う、何よりも尊い変化の始まりなのですから。
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