「高天原」って、他の呼び方があるの?
日本神話に出てくる神々の住む世界、「高天原(たかまがはら)」。
私たちは当たり前のようにこの名前を使っていますが、ふと「昔の人は本当にこう呼んでいたのかな?」「他にも呼び名はあるのかな?」と疑問に思ったことはありませんか?
実は、高天原には読み方のバリエーションがあったり、対比される別の世界の名前を知ることで、その性質がよりハッキリと見えてきたりする面白い特徴があります。
今回は、高天原の「別名」や「関連用語」を深掘りしながら、古代の日本人が描いていた世界地図(コスモロジー)を一緒に紐解いていきましょう。これを知ると、神社の祝詞(のりと)を聞いた時の「あ、今あのこと言ってる!」という気づきが増えますよ。
1. 読み方の違い:「たかまがはら」か「たかあまはら」か
まず、最も基本的な「名前」そのものについてです。
一般的には「たかまがはら」と読みますが、実はこれは「高天原」という漢字に対する一つの読み方に過ぎません。
「たかあまはら」という響き
学術的、あるいは祝詞(神様への手紙)の中では、「たかあまはら」と読まれることも多くあります。
分解してみると意味がよく分かります。
- 高(たか):高いところ
- 天(あま):空、天
- 原(はら):平らで広い場所
つまり、「空の高いところにある、広々とした平原」という意味ですね。
私は「たかまがはら」という音にはどこか物語のような響きを感じますが、「たかあまはら」と読むと、より素朴で、空を見上げた時の実感を伴った言葉に聞こえてきます。
神社で神主さんが奏上する祝詞をよく聞いていると、「たかあまはらに〜」と発音されていることがあるので、ぜひ耳を澄ませてみてください。
2. 高天原を理解するための「対義語」たち
高天原には、厳密な意味での「別の呼び名(同義語)」はあまり多くありません。その代わり、「対になる世界」の名前がたくさん存在します。
光があれば影があるように、対比される世界を知ることで、高天原という場所の輪郭が浮き彫りになります。
地上の世界=「葦原中国(あしはらのなかつくに)」
私たちが住んでいるこの日本のことを、神話ではこう呼びます。
「高天原(上)」と「黄泉の国(下)」の真ん中にあるから「中つ国」です。
葦(あし)が生い茂る未開の地、という意味もありますが、高天原の神々から見れば「これから統治すべきフロンティア」というニュアンスが含まれています。
死者の世界=「黄泉の国(よみのくに)」
高天原が「生」や「光」の象徴なら、その対極にあるのが死者の国である「黄泉の国」です。
イザナギとイザナミの神話で登場しますが、高天原とは明確に区別された、穢れ(ケガレ)のある場所として描かれています。
不思議な異界=「根の国(ねのくに)」
これは少しややこしいのですが、地下、あるいは海の彼方にあるとされる異界です。
スサノオが高天原を追放された後に行った場所としても知られています。「黄泉の国」と同一視されることもありますが、根の国には「生命の根源」というポジティブなニュアンスも含まれており、ここから試練を持ち帰って英雄になる(大国主命の物語など)パターンもあります。
3. 似ているけれど違う?「常世の国」との関係
高天原と混同されやすいもう一つの世界に、「常世の国(とこよのくに)」があります。
海の向こうの理想郷
高天原が「空の上」にあるイメージなのに対し、常世の国は「海の彼方」にあるとされる理想郷です。
そこは不老不死の国であり、豊かな富をもたらす場所。
『浦島太郎』の竜宮城も、この常世の国のイメージがベースになっていると言われています。
「空の上の高天原」と「海の向こうの常世の国」。
古代の人々は、空を見上げても、海を眺めても、「この向こうには素晴らしい神様の世界があるはずだ」と想像していたのでしょう。その想像力の豊かさには驚かされます。
まとめ:名前を知れば、世界はもっと立体的になる
高天原の呼び名や関連する世界についてご紹介しました。
- 読み方には「たかまがはら」と「たかあまはら」がある。
- 対になる「葦原中国(地上)」や「黄泉の国(地下)」がある。
- 海の彼方には「常世の国」という別の理想郷もある。
神話の世界は、単なる一枚岩ではなく、上へ下へ、そして海の向こうへと広がる立体的な構造をしています。
これを知っていると、神社で「高天原に〜」という言葉を聞いたとき、「ああ、あの高い空の平原のことだな」と、頭の中で鮮明なイメージを描けるようになります。言葉の地図を持って、神話の世界をもっと深く旅してみてくださいね。


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