神話は「読む」ものではなく「観る」ものだった
神社のお祭りなどで、笛や太鼓の音に合わせて舞う「神楽(かぐら)」を見たことはありますか?
「伝統芸能って、なんだか難しそう……」と敬遠してしまうのはもったいない!
実は神楽こそ、難解な日本神話を誰でも楽しめるエンターテインメントに昇華させた、最高の「ライブパフォーマンス」なのです。
私は以前、宮崎県で本場の神楽を見たときに、その迫力とストーリーの面白さに衝撃を受けました。「これって、神様たちの演劇だったんだ!」と。
今回は、神楽の意外なルーツである高天原のエピソードから、初心者でも絶対に楽しめるおすすめの演目までを分かりやすく解説します。
全ての始まりは高天原での「ストリップショー」?
そもそも、なぜ日本人は神前で歌ったり踊ったりするのでしょうか。
その起源を辿ると、古事記に記された高天原でのある有名な事件に行き着きます。そう、「天岩戸(あまのいわと)隠れ」です。
アメノウズメの功績
太陽神アマテラスが洞窟に引きこもり、世界が真っ暗になってしまったとき。困り果てた神々は、洞窟の前でお祭り騒ぎをしてアマテラスの気を引こうとしました。
その中心にいたのが、芸能の女神「天宇受売命(アメノウズメノミコト)」です。
彼女は空っぽの桶をひっくり返してステージにし、その上で足を踏み鳴らし、なんと胸をさらけ出し、腰の紐をほどいて踊り狂ったのです。
それを見た八百万(やおよろず)の神々は「なんて面白いんだ!」とドッと大笑い。その笑い声が気になったアマテラスが岩戸を少し開けたことで、世界に光が戻りました。
このアメノウズメの命がけの踊りこそが、日本最古の芸能であり、現在の「神楽」の起源とされています。
「神様を楽しませる(神遊び)」ことが、世界を救う力になる。神楽にはそんなポジティブなエネルギーが込められているのです。
これだけは見てほしい!高天原神話の人気演目
神楽にはたくさんの演目がありますが、高天原の物語を知るなら、以下の2つは外せません。ストーリーを知ってから見ると、面白さが倍増しますよ。
1. クライマックスの迫力「戸取(ととり)」
その名の通り、天の岩戸を取り払うシーンを描いた演目です。
主役は、怪力無双の神様「手力雄命(タジカラオノミコト)」。
【見どころ】
タジカラオが岩戸(作り物)を探し当て、全身の力を込めて少しずつ動かし、最後には豪快に放り投げるシーンは圧巻です。
私が高千穂で見たときは、タジカラオ役の方が汗だくになりながら舞っていて、岩戸が開いた瞬間、観客席からも「おお〜!」という歓声と拍手が巻き起こりました。会場が一体となって光の復活を祝う、感動的な体験ができます。
2. 激しいバトルに息を呑む「国譲り(くにゆずり)」
高天原から派遣された武神「タケミカヅチ」と、出雲の神「タケミナカタ」が戦う演目です。
地域によっては「鹿島(かしま)」や「香取(かとり)」という演目名の場合もあります。
【見どころ】
この演目の魅力は、なんといっても激しい殺陣(たて)です。
剣や薙刀を持った神様同士が、太鼓の急なリズムに合わせて激しく舞い踊ります。「これ、本当に神事?」と思うほどのアクション要素があり、子供から大人まで夢中になって見入ってしまいます。
高天原の圧倒的な強さと、敗れていく出雲の神の切なさ。セリフがなくても動きだけで感情が伝わってくるのがすごいところです。
「静」の高千穂、「動」の石見。あなたはどっち派?
一口に神楽と言っても、地域によってスタイルが全く違います。
高天原を感じる旅に出るなら、好みのスタイルに合わせて行き先を決めるのもおすすめです。
神秘的な空気感を味わう「高千穂神楽(宮崎)」
神話の舞台である高千穂の神楽は、「神事」としての側面が強いのが特徴です。
素朴で厳かな舞が多く、派手な演出は控えめ。その分、古代から変わらない祈りの形を肌で感じることができます。
静かな夜の神社で、焚き火の匂いを感じながら見る神楽は、本当に神様がそこに降りてきているような不思議なトランス状態に浸れます。
エンタメとして楽しむ「石見神楽(島根)」
一方、島根県西部(石見地方)の神楽は、「ショー」としての進化を遂げています。
金糸銀糸の豪華な衣装、スモーク(煙)や花火を使った演出、そしてテンポの速いお囃子(はやし)。
特に「大蛇(オロチ)」という演目では、巨大な蛇の着ぐるみが何体もうねりながら暴れ回り、スサノオと戦います。これはもう、和製ミュージカルと言っても過言ではありません。初めて神楽を見る人や、お子様連れにはこちらが分かりやすくておすすめです。
神楽鑑賞で得られる「心のデトックス」
私は神楽を見終わった後、いつも不思議な爽快感を感じます。
それはきっと、神楽の語源が「神座(かむくら)」であり、神様が宿る場所に自分も同席することで、日常の穢れ(ケガレ)が祓い清められるからかもしれません。
大きな音で太鼓が響き、目の前で神様が舞う。
そのエネルギーを浴びることは、最強の厄払いになります。「最近なんだかツイてないな」「元気が欲しいな」というときこそ、神楽を見に行ってみてください。
まとめ:神楽は「生きた神話」
高天原と神楽の関係についてご紹介しました。
- 神楽のルーツは、アメノウズメの岩戸開き。
- 「戸取」や「国譲り」などの演目は、神話の追体験に最適。
- 静かに浸るなら高千穂、派手に楽しむなら石見がおすすめ。
本で読む神話は「過去の物語」ですが、目の前で舞われる神楽は「今ここに生きている神話」です。
ぜひ一度、その熱気と神秘を現地で体感してみてください。きっと、高天原の世界がもっと身近で、愛おしいものになるはずです。
関連情報:高天原と鬼


コメント