「どこか遠くへ」よりも「自分に還る」旅。高天原ゆかりの地を歩いて、止まっていた時間を動かした日のこと

日常という「狭い箱」の中から抜け出したくなった理由

朝起きて、満員電車に揺られ、パソコンの画面と向き合い、また夜遅くに帰宅する。そんな繰り返しの中で、いつの間にか心の余裕を失っていました。30代になり、仕事の責任も増える中で、自分の本当の気持ちを押し殺して「効率」や「正解」ばかりを追いかけていた気がします。

ふと気づくと、季節の移り変わりや空の色さえ、記憶に残っていない。そんな自分に恐怖を感じ、どこか遠い場所へ、物理的な距離を置きたくなったのです。

都会の喧騒の中にいると、どうしても「誰かの声」が耳に入ってきます。SNSを開けば他人の幸せが目に入り、職場では誰かの期待に応えなければならない。そうしたノイズを完全に遮断するには、今の生活圏から遠く離れた、古い歴史が静かに息づく場所へ行くしかないと考えました。

日本神話の舞台とされる「高天原（たかまがはら）」ゆかりの地を訪れる旅。そこには、派手な観光施設があるわけではありません。ただ、何千年も前からそこにある森や、冷たく澄んだ水、そして静寂があるだけです。

その場所に身を置くと、自分が抱えていた「小さな悩み」が、大きな自然の一部に溶けていくような感覚がありました。それはパワースポットで運気をもらうというより、自分の中に溜まっていた不要なものを捨てていくような体験でした。

誰かと行くのではなく、あえて一人で歩くこと。自分の足音と呼吸だけを感じながら歩く聖地巡礼は、まさに内省の時間です。誰にも邪魔されず、ただ自分の感覚を信じて歩く。そのシンプルさが、疲れ切った心には何よりの贅沢に感じられました。

旅の間、意識的にスマートフォンをカバンの奥にしまいました。情報の海から離れ、目の前にある木の皮の質感や、風の音に集中する。そうすることで、自分の感覚が少しずつ研ぎ澄まされていくのが分かりました。

悠久の時を刻む場所に立つと、「今の仕事のトラブル」や「将来への漠然とした不安」が、とても一時的なものに思えてきます。世界はこんなに広く、時間はこんなにゆったりと流れている。その事実に気づくだけで、心の緊張がふっと解けていきました。

旅先で感じた清々しさを、日常に戻っても忘れたくない。私はそんな思いから、帰宅後にご祈祷済「浄化塩」を使って、家の中を整えるようになりました。旅での体験が、単なる思い出ではなく「日常を心地よく保つ習慣」に変わったのです。

旅から戻れば、また厳しい現実が待っています。聖地巡礼をしたからといって、魔法のようにすべての問題が解決するわけではありません。けれど、「自分には還るべき静かな場所がある」という感覚を持っているだけで、周囲の雑音に振り回されにくくなりました。

もし、旅を終えてもなお今の環境が辛く、自分の「景色」が濁ってしまうと感じるなら、それは場所を変えるべきタイミングなのかもしれません。旅で得た勇気は、新しい道へ踏み出すエネルギーにもなります。

「いざとなったら別の場所へ行ける」という選択肢を持つことは、自分を守るための最大の防御になるはずです。

有名な場所をすべて回る必要も、特別な作法を完璧にこなす必要もありません。大切なのは、自分の心が「あ、今、心地よいな」と感じる瞬間を一つでも多く見つけることです。

もし、自分の本質や進むべき方向が分からず迷っているなら、旅の合間に■カタカムナ使命診断のような知恵に触れてみるのも、自分自身への理解を深める良いきっかけになるでしょう。

聖地巡礼とは、外側の聖地を訪ねるだけでなく、自分の中にある「聖域」を再発見する旅なのだと思います。明日を少しだけ前向きに、そして自分らしく生きるために。まずは小さな余白を作ることから始めてみませんか。